Title03:白

※三年前に書いた文章を少し修正

 

Title03:白

ある日の猫と犬の会話

 

「考えすぎじゃないかなぁ」

「いいや、そんなことないね。絶対に深い意味があるんだよ」

「だって君って犬にしちゃ白すぎるぐらい白いだろ。だからシロって名前にするのは普通のことじゃないかな」

「そうかもしれないけど、白ってのはそれ自体が意味をもつ言葉だよ」

「例えば?」

「なんというか、白というだけで潔白とか清廉とかそういう意味がつくだろ」

「まあねえ」

「何物にも交わらない色としての宿命というか、汚れなきイメージというか」

「そうねえ」

「だからね、僕の名前は深い深い意味がある。つまりそのイメージに恥じない存在であれという」

「それはそれでいいけどね。そんなにプレッシャーに感じるなら、考えなくてもいいんじゃないかな」

「いや、僕は常に清廉潔白な心を持って生きていくべきだ。この名前をもらったからには。でも確かにそれはとても重い宿命だよ」

「やっぱり考えすぎだと思うけどな」

「医者は白い服を着る、死者も、神も、天使もだ」

「そうまで言うならだよ、2丁目のクロはどう?同じことを考えて生きてると思う?」

「黒ね。黒もまあまあ意味深な色だよね。でも白ほどではないよ」

「そう?」

「そうだよ。黒という言葉には色の名前以上の意味はないよ。白とは違ってね。ただイメージがあるだけ。しかもそのイメージというのは、白の反対としてのイメージなんだよ。まず白があって、黒のイメージができあがる。その黒に特別な意味を感じるというのは、それこそ考えすぎだよ」

「ふん」

「ともかくね、僕は畏れ多くもこの白という名前をもらったわけだ。だから何としてもその名に恥じぬ生き方をしなければならない」

「君がそう思うことは自由だよ」

「僕は自由だけど僕の名前からは自由になれない」

「ううん、ねえ」

「なんだい」

「君の清廉な名前についてはよくわかったけど、僕の名前についてはどう思う。タマという名前については」

「すごくよい名前だと思う」

「それはまたなんで」

「覚えやすくて呼びやすければそれでいいんだよ」

「ああそう。それじゃ君の名前もとてもいい名前だね」

「ありがとう」

 

ここでその日の二匹の会話は終わった。

 

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少しだけ文体が気に入らなかったところを直した。

これは「白」というお題からただ思いついた文章を書いたんだったと思う。

二匹とか二人がとりとめのない会話をしているというシチュエーションが好きです

(まれ子)